Facebookにも上げたのですが、日本民藝館で開催されている表題の展示会に行ってきました。
これは、昔、民藝運動の思想家や蒐集家が集めたアイヌの服や食器や装飾品、思想的な意味合いのある道具などを展示するものでした。
日本民藝館は建物自体が歴史のあるところで、雰囲気もとても良い所でした。
併設展では台湾原住民の手仕事、仏教版画その他がありました。アイヌのものは少しづつ、ホールに飾られていたのですがその本懐は大広間にありました。
実は今回の展示は「アイヌ最上の姿で示した展覧であった」と日本民藝館創設者の柳宗悦が評した1941年開催のアイヌ工芸展をなるべく再現する形で展示されていたそうです。
柳宗悦は今回初めて知ったのですが、民藝運動を起こした思想家であり哲学者だったそうです。
また、今回の展示では染色をメインとする民藝運動の主要人物である芹沢銈介の美術館からも数多くの展示品がよせられていました。
もちろん、芹沢銈介についても今回知りました。
併設展も交えながら進み、大広間に入るとその1941年の展示を再現された形でアイヌのアトゥシ(厚地の衣類)が何かを訴えかけるように掲げられていて思わず声が漏れました。まぁ、マスクしていたから誰にも気づかれませんでしたけど。
衣類だけではなく、マキリ(鞘に装飾が施された短刀)などの道具も展示されていました。
そして、大広間の中央には何冊かの資料が。
すでに販売が終了しているという、図録『アイヌの美しき手仕事 柳宗悦と芹沢銈介のコレクションから』（発行：公益財団法人アイヌ民族文化財団）などが置いてありましたのでたっぷり読んできました。
その中に印象的なエピソードが。
それは、柳宗悦だったのかほかの誰かだったのか覚えていませんが、とにかく内地のどなたかが開催に携わったアイヌの展示会場で、とあるアイヌの女性から話しかけられた内容です。正確には覚えていませんが、
「ここに飾ってあるアトゥシの数々は、樺太アイヌであった私の祖母や母が強制的に北海道に移住させられるのに際して、僅かな金銭と引き換えに学者達に渡さざるを得なかったものなのです。魂を込めて作られ、大切にされていたこれらの衣類を渡すしかなかった祖先の気持ちがあなた達にわかりますか？」
という趣旨のこと。
これを読んだ時、私もそんな事には全く想像が及んでいなかったと反省させられました。
ここに飾られているものの数々は、単に工芸品として作られたものではない。(工芸品に気持ちがこもっていないというつもりは毛頭ありません)
アイヌが暮らしの中で培ってきた自然への信仰心(と言って良いのかどうか)から産まれた何かが込められたものであって、それはアイヌにとって金銭と引き換えに和人に渡せるものではないものだった、でも、そうせざるを得ない出来事が昔、あった、ということ。
近代、アイヌの工芸品は土産物として作られ観光地の店先に並んでいますが、元々は私の想像では及ばない意味が込められていたし、ここに展示されている数々はそんな意味が込められたリアルなものなのだと思いました。
実際、今回の展示品は全て、暮らしの中で付いたであろう染みがあり、繰り返し使われたことでそうなったであろう艶があり、自然のものを使って何かを思って彫られたのであろう彫刻が施されたものばかりでした。
今年、北海道の白老町には「ウポポイ」と呼ばれる国立の博物館ができました。国の施設としてアイヌ文化を紹介？保護？展示？？する施設ができたというのは、地元で育った者としては結構驚きでした。北海道が展示するアイヌと、内地の人が展示するアイヌ(今回の展示)、どう違うのかとても興味があります。柳宗悦が「最上」と評した展示は内地の和人からの観点なのではないか。あくまでも、吸い上げる側の人間の評価なのではないか。凡人の私には評する術もありませんが、記憶の新しいうちにウポポイに行けたら、と思います。
休日はついついのんびりしてしまい、誰かと約束でもしていないと出掛けることなく終わったりしがちでしたが、今日は良い休日になりました。美術館や展示会に行くのは日常では知ることのできなかった様々な文化に触れる機会なのですね。
生まれ育った地元の文化でも、知らないことや想い及ばないことがあるのだなと改めて思い知らされました。
大広間の撮影可のエリア。
日本民藝館のサイトより。
めっちゃ蚊に喰われましたけどね(笑)
おっと、これは今夜のびーる。麦とポップに黒があるとは(笑)
